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高松高等裁判所 昭和48年(ラ)2号 決定 1973年3月15日

抗告人 亀崎喜博

抗告人 横田静夫

右抗告人両名代理人弁護士 吉田太郎

主文

本件各抗告を却下する。

抗告費用は抗告人らの負担とする。

理由

本件抗告の趣旨および理由は、別紙に記載のとおりである。

よって判断する。

記録によれば、債権者宇都宮忠福は、同人から抗告人らに対する松山地方法務局所属公証人山本将憲作成昭和四二年第二四二五号債務弁済契約公正証書の執行力ある正本に基づき、松山地方裁判所宇和島支部に対し抗告人ら所有の各不動産につき強制競売の申立をしたところ、同裁判所は、昭和四三年九月一二日右不動産に対し強制競売開始決定をしたこと、抗告人らは、その頃同地方裁判所大洲支部に対し右公正証書の執行力の排除を求める請求異議の訴を提起し、これに伴い昭和四三年一二月一九日同裁判所において「本案判決をするまで強制執行を停止する」旨の決定を得て、その正本を前記執行裁判所に提出し、本件強制執行の停止を受けたこと、次いで昭和四七年九月二〇日同地方裁判所大洲支部において「右公正証書に基づく強制執行は許さない、右同裁判所が前記請求異議事件につき、昭和四三年一二月一九日なした強制執行の停止決定はこれを認可し、これについて仮りに執行ができる、」旨の判決を得たこと、そこで、抗告人らは、右停止決定の認可およびこれについての仮執行宣言の正本は、民訴法五五〇条一号の裁判の正本に当るとして、昭和四八年一月二六日原裁判所に右裁判の正本を提出して本件執行処分の取消を求めたところ、原裁判所は、抗告人らにはかかる申立権がなく、また、前記停止決定の認可およびこれについての仮執行宣言の正本は、民訴法五五〇条一号の裁判の正本ではなく同条二号の裁判のそれに当るとして、現在に至るまで右執行処分取消の申立に応ぜず、かつ、右申立に対しては却下その他の裁判を全くしていないこと、以上の如き事実が認められる。ところで、執行債務者は、民訴法五五〇条各号に記載の書類を有しているときは、これを執行機関に提出して執行の停止又は取消を求めることができるのであって、債務者が右各書類を提出して執行の停止又は取消を求めたのにも拘らず、執行機関がこれを無視して右申立に応ずる挙に出ないときは、執行債務者は、民訴法に定められた手続により、右執行機関の措置に対し不服の申立ができると解すべきである。しかして、右不服申立の方法については、本件においては、その執行機関は裁判所であるけれども、右は執行裁判所の執行方法に不服を申立てるものであるから、抗告人らは、まず右抗告人らの申立を容れなかった原裁判所の措置に対し民訴法五四四条の執行方法に関する異議の申立をし、これに対する原裁判所の決定に不服があるときは、さらに民訴法五五八条による即時抗告の申立をなすべきものであって、本件の如く、執行方法に関する異議の申立をすることなく、直ちに即時抗告の申立をすることはできないというべきである。なお、付言するに、当裁判所も、抗告人らのいう前記停止決定の認可およびこれについての仮執行宣言の正本は、民訴法五五〇条二号の裁判の正本に当るものと解する。

よって、本件各抗告は不適法であるから、民訴法四一四条三八三条によりこれを却下し、抗告費用は抗告人らに負担させることとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 加藤龍雄 裁判官 後藤勇 小田原満知子)

<以下省略>

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